書評日記 第100冊
ヒーロー志願 北崎拓
小学館

 はう〜、予定が狂っちまったもんで、本日の書評日記は、本当に本日に書いてます。確かに俺にとっては、100冊めは単な通過点なのだから、適当に本棚から1冊選んでもいいわけなのだが、その、なんだ、やっぱり「期待」なさるでしょ。ま、俺としちゃあ、諸君諸嬢の淡い期待なんかそっちのけで、やっていきたい・・・とは、思うんだがな、あまりに、さらっと流してしまっては、な〜んだ、ということになりかねんので、ま、一応考えてみたわけ。
 というわけで、本日の一冊は北崎拓の「ヒーロー志願」(小学館)である。ははは、誰も知るめぇ。ざまあ見ろってんだ、こんちくしょう。

 生憎だ、ホームページの容量の関係と、いちいち20KバイトのGIF画像をアップするために繋がらんとかなんとか、いらいらしたり、本棚ひっくり返して、目的の本を探すのは、あまりにアホらしいので、スキャナするのは止めてしまったので、この「ヒーロー志願」は漫画である、と書かないと、漫画であることが解んなくなってしまった。
 よし、わかったな、漫画なわけだ。そして、表紙を見ることができないので、それほど巧いとは云えない絵、そして、あまり好まれないような絵柄であることも、解らなくなってしまった。
 よし、わかったな、大して巧い漫画家ではないのだ。ま、プロなんだから、巧くないといっても、そこそこはあるのだけれども、「独特」な絵柄という便利な言葉もあるので、それをあてはめておこう。

 北崎拓の連載デビューは「空色み〜な」という、今から考えれば、とんでもなく恥ずかしいストーリーの漫画だ。その次が、この「ヒーロー志願」だったハズ。あと、短編集が一冊。その後は・・・なんか、いまひとつなんで、持ってない。悪いけど、俺は、この作品が彼の一番だと思っている。所詮、作家というものは初期作品を超えられないものなのか・・・そんなことはないと思うんだけどなあ。
 ざっと粗筋を云えば、特撮のヒーローになりたい男がいる。俳優学校だか、なんだかに入るわけだな。当然、お決まりのように、女優志願の女の子もいるわけだ。ま、なんだかんだあって、スタントマンになる、つー、単純明快、というか、いや、実のところはそれ程「単純」ではないのだが、素直に読める作品だ。縁があれば、古本屋で会えるであろう。そんなもんだ。

 で、ま、何がそんなにいいのか、を説明するのは苦労するのだけれど、北崎拓自身が特撮FANであり、そして、こうありたい、と思ったんだろうな、多分。だけども、漫画家になって、それでも何かやりたくて描きたくて、そーいう駆け抜ける感じがする作品なわけだ。ま、俺も、なんか、漫画は描いてたけど根性というか度胸がなかったから、結局のところなんにも出来ずにここに至っているわけなのだが、そんな俺に対して、なんか、やらんとあかんかなぁなぞと、思ったときに、何故か知らないけど、本棚から飛び出てくるような漫画本なのだ。無意識というのか、なんというのか、俺にとって生きている「本」である。

 ま、諸君諸嬢は、こーいう、地味ぃな日記を楽しんでいるわけだから、好きな本の一冊や二冊はあるだろう?
 本っていうのは、所詮、紙と活字の世界だし、架空の世界だから、それほど感情移入するのも恥ずかしいというのか、バカみたいとか、そんなときもあるけど、やっぱり、裏には架空の世界を作り上げている作家がいるわけで、その作家の下で真剣に「遊ぶ」というか、対面してみるというのか、そーいう作家の「音」を聞くことは大切なことだと思うよ、うん。少なくとも俺は、思う。

 そう、今、ユングの「分析心理学」(みすず書房)を読んでいる。計5回だかの講義がそのまま載せてあるのだが、なんかすげー解りやすい。ユングのじじいも「ユーモア」が大切と云っている。余裕のある人は、やっぱり違うぜ、うん。諸君諸嬢も「余裕」を持たなくちゃあ、あかんよ、うん。

update: 1996/09/09
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