書評日記 第126冊
ブックス・ビューティフル 荒俣宏
ちくま文庫

 新宿小田急の「エッシャー展」に行って参りました。メンバーは、俺と、「神話好きな彼女」とその友人です。いやあ、「神話好きな彼女」、かわいいです。茶色いつば付のベレー帽に茶系の縦ラインの服。まさに、絵本を作るにぴったりな姿でありました。あなたが好きなのは解るような気がします。俺も、まあ、好きですね、うん。

 まあ、俺のそんな感情はいいとして、「エッシャー展」の入り口で午後1時の待ち合わせ。入場料800円也を払って、入場します。彼女、「意外と安い」と申しましたが、あーのね、そんなもんでしょう?、これで、2時間楽しめるのは、ま、やっぱり安く楽しく余暇の利用というわけです。
 で、つるんで見ていても仕方がないので、午後3時に「エッシャー展」の出口で待ち合わせということで、散り散りになります。俺としては、一緒に観て、解説などしてあげたかったのですが、まあ、いいでしょう。絵なんてものは、「解説」なぞいらないのです。まず、最初に見ることが大切です。自分の目で見る。そして、なんからの感想を自分の中でも持つ。そういう作業は、「読書」と似たものがあります。だから、隣でうだうだ解説をしながら、べたべた歩きの、そこのカップルの彼氏!、見苦しいから止めなさいね。彼女の好きなように見させてあげて下さい。
 俺は、といいますと、以前、見ているので、今回は目的の絵をじっくり眺めるために来ております。そうそう、日曜日の展覧会会場ということで、いささか込みぎみでありました。ただ、こういう展覧会では順序を無視しても、かまわないことがあります。いや、順路があったとしても、込んでいる中をいらいらしながら、行列を作りながら、絵の鑑賞をすることはありません。ずーっと先の方に行って、空いているところから見ていって下さい。行列には波があるので、所々空いています。そこに入って、じっくり鑑賞するのが賢い見方です。
 「鏡のある静物画」が好きでねぇ。たっぷり、20分かけて見ていました。ガラスのコップと香水の壜、ろうそくと、鏡映っている町中の風景。そういう静物画が好きです。で、この絵の大きさは、394x287と意外と大きいものでして、これを見るためには、1m程度離れて見なくてはいけません。いわゆる、画家が、それを描いた視点で見るのが一番いいのです。ところがね、目の前を幾人もの人が通ります。あーのーねぇ、「絵」というものは、そんなに間近で見つめるものじゃないんですよ。ちょっと離れて、絵全体が視野に入る程度の距離が一番いいんですよ。それに、人の鑑賞している目の前を通らないで下さい。後ろを通るようなマナーは必要だと思うのですが・・・、と思いつつ、幾人もの方に目の前を通り過ぎられてしまった俺。うーむ、俺って、すぐに気配を消してしまうからなあ。そんな理由もあるかもしれません。
 あとは、まあ、のんのんと、鑑賞してました。「天使と悪魔」が好きなんで、これもしばし鑑賞。そうそう、献血日記の方のホームページの表紙にある天使の絵。あなたの作品だそうですね。なーるほど、なんとなく納得致しました。そう、俺の第一印象は、「非常にセンスのいいものを感じた」です。あのような絵に魅了されて、他のページを見る時、献血日記の黒いバックは場違いなような気がするのは、俺だけでしょうか。話は変わりますが、はっきり云って、俺の「審美眼」は確かなものがあります。あなたならば、大丈夫です。根底に「美しい」ものが流れる者の描くものは常に「美しい」ものです。安心して、色々描いてみてください。見に行きますから。「一歩踏み出してみて、間違ったと思ったら、一歩戻ればいいのです。」この科白を再び、あなたに捧げましょう。

 さて、本日の一冊は、エッシャーでも良かったのですが、まあ、色々紹介したい本もあるということで、荒俣宏の「ブックス・ビューティフル」(ちくま書房)です。えーとね、「ダリ好きな彼女」に送った本です。本当は、そっちの関係(?)で紹介しようかなあ、と思ったけど、まあ、いいでしょう?、あなたも好きよん。つーわけで、今回は、「神話好きの彼女」にこの本を送りましょう。
 ご存じ、荒俣宏は、トンデモ系の作家であります。まあ、作家というよりも蒐集家と言った方がいいでしょう。いろいろ、妙なものを集めては「博物学」的に紹介しています。妙な人です。で、「ブックス・ビューティフル」は、「美しい」というテーマを元に蒐集した本の紹介です。神話の絵、宗教画、風刺画、妖精画、女神画、とまあ、いろいろ詰っています。こういう博物学的に蒐集している本は、資料価値があって、なかなか便利です。これを買って、眺めるも良し、画家の名前を覚えて、関連文書を探すも良し、展覧会に行くもの良し。「知識」というものは、そういう繋がりを求めるものです。そういう意味で、荒俣宏ってのは、いい存在なんですよねぇ。あ、そうそう、彼もプログラマでした。うーむ、これって何か意味があるのかな?、どう思う?

 「エッシャー展」を観て、普通は、喫茶店で、感想談義・・・なんですけどぉ、あの、喫茶店で3時間以上もダベっていて、「エッシャー」の話が全然出てきませんでした。ははは、おざなりに、その後のお好み焼き屋で、そういう話題をしたのは、エッシャーに対する罪悪感からでしょうか。
 そう、エッシャーを鑑賞するポイントは簡単なものです。
 「無限と繰り返しと平面分割と空間と連続、それが、数学者ではなく芸術家であったエッシャーのテーマだったのです。」

 最後にあなたにお礼を申しあげます。
 俺の「価値観」というものに、「友人」を与えて下さったことに感謝します。心より、ありがとう。

update: 1996/09/09
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