書評日記 第177冊
ベットタイムアイズ 山田詠美
河出文庫

 お望み通り(?)ミスター・ドーナッツで此れを書いています。

 ついさっき「ベットタイムアイズ」のラストを読み終えました。本当は、会う前に読み終えるつもりでいたし「教本」のつもりで読み始めたのだけど、ラストの数ページを残して読み終わりませんでした。

 何故かラストの部分「時間がない。時間がない。」のフレーズで泣けてきてしまうのは、俺がこの小説を本当の意味で理解しているからだと思います。
 この「せつなさ」が貴女に伝わるでしょうか?

 一晩?いや、十数時間に及ぶ求め合いは、この感情を盛り上がらせる前奏曲だったのかもしれません。本当に充実して、本当に楽しくて、本当に気持ちの良い時間を、ありがとう。今の涙は、悲しみの涙なのか、嬉し涙なのか、それはよくわかりません。
 よくわからないながらも、こうやって涙しながら綴っていく文章を貴女はどのような読み方をするのでしょうか。

 一体となりたいのに、一体になられないこの「せつなさ」というものが、あれだけの濃縮した時間を演出していたのかもしれません。
 睡眠時間は2時間しかなくても、ぜんぜん疲れていなくて、足を絡めたまま腰を動かし、唇だけを求める情景は他人にはどのように映るのでしょうか。
 単なるオスとメスのまぐわりに見えるのでしょうか?

 ……でもさ、俺達は本当に真剣に相手を求めていたのだと思う。

 貴女の舌の感触を思い出す度に泣けてくるのは何故でしょうか。
 求め合って、ぎゅっと抱きしめて抱きしめられている時は、本当に気持ちよくて、本当に楽しくて、ただただ貴女の肌の感触を楽しんでいて、とっても満足だったのに、こうやって時間が経って思い出してみると何故かせつなくて涙が出てきます。

 そう、俺には別に入れる行為自体は、どうでも良かったのかもしれない。事実、あまりのあっけなさに、失望というかなんというか……、そのあとは萎えたまんまだったもんね。
 でもね、貴女を抱きしめて、悦びを与えて、キスを返されるのは、俺にとって最高の気分だったのは確かなことです。

 ああ、書いても書いても涙が止まりません。
 今度、会えるのは何時なのでしょうか。
 1月に会えるのを楽しみにしています。

 そう、本当に楽しい時間をありがとう。俺のために、俺だけのために、来てくれてありがとう。
 心より感謝をこめて今日の日記を貴女に捧げます。

update: 1996/12/28
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