書評日記 第291冊
人工生命 スティーブン=レビー
朝日新聞社

 以前読んだ「アインシュタインの部屋」と、NHK特集の「電子立国日本」が参考になると思う。
 キーワードとして「セルオートマトン」、「自己組織化」、「遺伝子的アルゴリズム」を知っていればいいと思う。

 思考の道具としてのコンピュータを見た時、GEBから魅せられ続けている「くりこみ理論」は、今においてもなお私の中では健在だと思う。
 改めて「進化」というものを考え直した時、無情な自然淘汰の現象から垣間見られるのは、より環境に適応しようとする自分の姿である。つまり、進化という現象が、過去から未来において続いているならば、この一瞬一瞬も進化の道のりのひとつではないかと思うことができる。
 もちろん、私自身が淘汰される側なのかもしれないし、カオスの縁に居る人間ならば、人類の進化の歩みからは弾き飛ばされているわけだから、道のりの中の一席にいるとは限らない。
 ……まあ、自分のことはしばらく保留。

 LISPに興味を持ったのも偶然ではないし、その後に「遺伝子的アルゴリズム」というコンピュータ方法論を知ったのも偶然ではない。 それらを知っているからこそ、「人工生命」の中に描かれる思考する道具としてのコンピュータ、そして思考するコンピュータに惹かれるし、それらの未来の現実を私は疑わない。

 美しさというものは伝播され得る。モラルが親から子へと伝播されるように、個人個人が持つ人生観は綿々とその人の歴史の中に織り込まれている。それが、「ミーム」という言葉で表わされる。
 そういう理論体系に気付くこと自体は、身を不幸にする。
 少なくとも、気付かずにいる鈍感さ自体に気付かない生活を送るよりも、しんどい心情に陥る。
 ただ、一度回転し始めた思考の歯車を止める術がないように、私自身の「気付く」という現象も止まることを知らない。または、止まることができない。
 だから、一切を忘れたことはない。
 すべては、「わざ」とやっているに過ぎない。

 あらゆる学問に通じるのは、活性化された自分を持て余さない貪欲さだと思う。
 それらの様々な行動が私自身にどう影響してくるか、私自身はよく知っているはずだ。

update: 1997/05/05
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