書評日記 第15冊
東一局五十二本場 阿佐田哲也
角川文庫

 麻雀は、やったことは無いとは言わないけどあんまり上手くないので全然しない。(授業料は、ちびっと払ったかもしれない)
 だから、大学時代に阿佐田哲也が流行ってもあえて読まなかった。で、半年ほど前、あえて読んでみたわけだ。それがこの「東一局五十二本場」である。

 彼は、色川武大としてデビューし「狂人日記」なんてのを書いている。色川ネームの方は、ちょっと文学っぽくなっていて阿佐田ネームの方を先に読んでしまうとちょっともの足りなく感じるかもしれない。(現に私はそうだった。)阿佐田哲也といえば、麻雀放浪記全4巻が有名で、映画にもなったし(見てないけど)そのテの麻雀漫画雑誌ではなかなかの評判だったハズだ。麻雀漫画といえば能條純一の「ナきの竜」(漢字が出て来ん)が有名だ。能條と言えば「月下の棋士」(いわゆる将棋漫画)があるし、棋士といえば羽生名人だよなぁ、羽生名人といえば・・・ん?詰まった。ま、連想ゲームはいいとして、阿佐田哲也の描く麻雀の世界は、彼がそれにそれほど染まっていた(あとがきにも書いてあるけど、彼自身はそれほど修羅場を経験したわけではないそうである。一連の雀鬼シリーズには、「坊や」と呼ばれる主人公がハードな経験を積むわけだが、この「坊や」の言動や周りの雰囲気がリアルで阿佐田=「坊や」じゃないか、つまり単なる私小説じゃないかと誤解させる迫力がある。もっとも、読む側にとっては、どっちでもいいのだけど)訳ではないそうなので、その手の専門分野・知識の奥深さ、と同時に、なるほど読者の知らない世界を描き切れば結構迫力がでるもんなんだ、という驚き&ナットクが得られる。
 ちなみに、色川ネームの方「狂人日記」とか「色にありけり」(だったかな?)なんてのはちょっと迫力に欠ける。ま、阿佐田ネームと切り離して読めば(っていったって、無理だよね)半村良っぽくていいんであるが・・・。

 なんか、ここ2か日間まじな書評(といっても昨日はちょっと含みがあるけど)みたいなことをやっちまったな。15回め(公開してから3回目)ともなると結構なんだか(自己満足じゃね)。感想メールも貰っちゃったし。そのうち「見てくれぇメール」が届きましたら、そんときはよろしく。では、では。

update: 1996/06/12
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