書評日記 第19冊
一瞬の夏 沢木耕太郎
新潮文庫

 沢木耕太郎といえば「深夜特急」の方が有名なんだろうけど、あえてこっち「一瞬の夏」を選んだ。
 別に、作家一人につき一冊というきまりがあるわけではないのだが、今んとこそんな感じで進んでいるので、ま、とりあえず「この人の本ならば」という形で一冊紹介している。そのうちネタが尽きたら、2冊めも紹介するでしょう。・・・当然、ひとりの作家は、たくさんの本を書いているわけだし、それを一冊の著作のみで云々しようというのは、愚かなことだ。
 で、まあ、ちょっと内容を明かせば、『元東洋ミドル級王者カシアス内藤がカムバックしようとする話』である。たぶん、この一文で内容が大分ばれちゃうけど、文庫本の裏の紹介にも書いてあることだし、かんべんしてもらおう。

 カシアスというのは、モハメド・アリの前の名前だそうである。つまり、カシアス内藤は、東洋のアリとして存在し(同時に存在を期待され)彼はその名を背負っている限り(ほんとうのところは、「名」に縛られるわけではないのが読むとわかる)カシアス内藤そのものにはなれないという矛盾を含む。
 ま、あんまり内容をべらべらしゃべっちゃうと読む楽しみもなくなるし、ストーリーを楽しむことができなくなるから、この辺でやめておくけど、アジア横断ストーリー「深夜特急」とはちょっと趣が違うので、「深夜特急」の軽さ、ないしギャンブル場面に閉口している方(かく云う私がそうなのであった。2冊めになってもシンガポールまでしかいかないし、その間には、香港の賭け事がエンエンと続いている。で、今は4冊めの途中でちょっとストップしている)には、沢木耕太郎はこういうのも書ける(ルポライターだから当然かな?)ってんで、いいかもしれない。
 あと、この前に「人の砂漠」がある。「棄てられた女たちのユートピア」は彼のルポライター根性全開だ。

 そーいえば、今日でホームページを公開して1週間になる。書評日記では19冊め(途中1回さぼったし・・・)。なかなかいい調子ですすんでいるのが、自賛ながらうれしいな。
 ふと、一覧表をみると、んー、紹介している分野が広いようで狭い。もうちょっと、切羽つまってきたら(3、40冊とか)あられもない分野に飛んでいくんじゃないだろうか?
 あ、そうそう、自分でも思うんだけど、文章がちょっとなめらかになったと思う(記憶違い・ど忘れはあいかわらずだけど)。ちょっとだけ、リハビリが効いているのかな?

update: 1996/06/16
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