書評日記 第25冊
美紅・舞子 西村しのぶ
小学館

 神戸を描く漫画家、西村しのぶは、ま、結構だいじょうぶならしい。あれから、1年半経つけれど、そうそう揺れてはいられないだろうし日常ってのはなにがあっても流れていくもんだと思う。

 さて、「美紅・舞子」はどっちかというとレディースコミックの部類に入り、少女漫画脱却とか以前からこの分野にいるから他の3冊とはちょっと趣が異なる。「サード・ガール」の方(これは劇画村塾という雑誌に掲載されていた)が有名なんだけど、私は「サード」の方を通して読んだことはないので(「That's イズミコ」を立ち読みしていたときについでに読んだくらい)こっちの方を紹介しておこう。
 西村しのぶは、迫力のある女性(とはいえ、主人公は高校生なんだけれども)を描くのがうまい。他の少女漫画が、高校生とはいえ精神的には(今ではどうかしらないが)幼い女の子像を描きたがるのに対して、西村さんの描く高校生はまことに大人っぽい。それは、いまのススんでいる女子高生(私は、高校の教師ではないし、ましてや女子高生ではないので、雑誌の見出し程度の知識しかないけど、彼女らは同じ女子高生でもススんでいる部類に入っていることぐらいはわかる)そのものではないかと錯覚してしまう部分が多い。だが、この「美紅・舞子」の初版が96年なのだし、「サード・ガール」にいたってはそれ以前(私が中学生の頃だ)なのだから、当時としても現在としてもずいぶんススんだ女性像を描く人である(であった)にちがいない。
 迫力という点では、女性が異性に見せたがらない面(男性である私には、男性がそれほど表裏があるものとは思えない。これは、単に女性ほど(良い意味で)狡猾でないことを意味する。)が存分に描かれているような気がする。男を取り合って叩く・悪口を云う・品定めをする・という行為(当然、男性もやるし、それが、男の特権であるハズがないことに男性諸君は気づくべきだ。)が、人として当然の行為であり、性別に左右されない素直な行為であることを改めてしらしめてくれる。

 以上は、男性である私がレディースコミック(という分類にしてしまうのは、ちょっと気がひけるのであるが)である西村しのぶの「美紅・舞子」を見て思った点なんだけど、当の女性諸嬢がそんなことを考えてよんでいるハズは、ない、とかなんとか、思うんだけどどーなのかな。聞いたことがないのでよくわかんない。
 ただ言えるのは、決して女性を侮ってはいけない、少なくとも男性というだけで女性の上位に立っていると思い込んではいけない、ってな感じがする。いまだに男性上位の社会であるから(って思っているのは私だけ?)男性陣はのほほんとしていてもなんとかなるような時代ではあるけれど(特に就職なんて、きびしいといわれても女性よりは優遇されている)意気のいい女性はジッと様子を伺っているわけだ。

 ごめん、今日はちょっとメールを書きすぎて(リンクの許可メールを出しまくった)ちょっと頭がうに状態になっているらしい。
 とりあえず、少女漫画シリーズはこの4冊めで〆ておきます。他にもたくさんあるけど、また、しばらくしたら(50冊めぐらいかな)何冊が選んでみよう。
 この「書評日記」を読んで下さった諸氏諸嬢に感謝をこめて。

update: 1996/06/22
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