書評日記 第24冊
はじめちゃんが一番 渡辺多恵子
小学館

 渡辺多恵子さんの「はじめちゃんが一番!」は、別コミ連載で昭和64年開始、平成6年に連載終了。「はじめちゃん」の主人公は、岡野はじめ・・・なんだろうけど、多恵子さんが描きたかったのは、彼女の弟軍『5バカ』(って、書いてあるし)あつし、かずや、さとし、たくみ、なおとという5つ子である。モデルは「光源氏」なんだけど、彼らのデビューまもなくの連載開始、そして解散しばらくしての連載終了という、まことに「光源氏」FANとしての渡辺多恵子の連載だったのだ。

 私(等)にはちょっとわかりかねるけど、「光源氏」なり「忍者」なり「SMAP」なりのジャニーズ事務所の勢いってのは、年々すごくなってくる。いわゆる歌番も全滅してしまったし、アイドルってのもいなくなったのにあいかわらず、圧倒的なFAN層をもっているこの事務所は、ま、並みではない。
 それが題材なんだろうか、それとも単なるミーハー根性で描きはじめたのかはわからないけど(ミーハーにしても、漫画になる活力ってのは並みではない。)「はじめちゃん」の世界では、M2というジャニーズ事務所そっくりの芸能プロダクションがあって、これまた、瑞希・晃コンビのWEという絶頂アイドル(ってのは誰だがわかんないけど)がいて、そしてA.A.O.という光源氏そっくりの若手アイドル5人組みが出てくる。
 こうなってしまうと、まるで単なる芸能漫画みたいに聞こえるけど、「ファミリー」を描いた渡辺多恵子がそれだけで終わるはずがない・・・し、事実それだけではない。ま、云うにはずかしいけど、ひじょうによく練られたストーリーであるし、なんか考えさせられるところありーの、漫画であるからギャグはそれなりにありーの、と模範少女漫画っぽい感じ。(「模範」とかくとなんか堅苦しく感じるけど、ほんとうの意味での「模範」が渡辺多恵子の漫画にはあると思う。)

 あいにくホントウの少女達に(少女漫画を買うおじさんはヌキにしてということ)どれだけ読まれていたのか、どれだけ支持されていたのかはよくわからないけど、当時の別コミの中央に位置していたといっても過言ではない。ただ、今の少女達が少女漫画なるものを読むのかどうか(少年〜サラリーマンは、少年漫画をよく読んでいるけど)がさだかではないので、別コミの中で読まれている方であっても、それがすなわち現代の少女達の好みであり、かつ、心のよりどころあるかどうかは、わからない。

 ちなみに、私が初めて少女漫画雑誌を買ったのは別コミではなくて「ちゃお」の方(赤石路代のFANなので)だったと思う。最近は、コンピュータ雑誌で「少女漫画を読んでます」等の文章をみつけるようになったんだけど、それは、市民権を得たからなか。それとも、だんだん年食って恥ずかしくなくなったからだろうか?(後者のような気のする私)
漫画でも小説でもどんな分野でもなんでも、とりあえず、読んでみよう見てみようってのが、私の趣旨なんだけど(単なる趣味という話もある)、少女漫画は少女が読むもの(つまり、男の読むものじゃない、乃至、読めない。)としてしまったんでは、いろいろな選択肢の半分を棄ててしまっていて、もったいない、と思ったからなのである。
 ま、でもさ、背広を着たサラリーマンが少女漫画のコーナーでうろうろしているのは情けないから、やめましょうよ。せめて、休日にジーパン姿で行ってね。(どちらも同じかもしれんけど・・・さ。)

update: 1996/06/21
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