書評日記 第43冊
ドバラダ門 山下洋輔
新潮文庫

 わっは、はっは、はぁーあーあっ。れれれな、れれれな、れれれなーれれな、れれれな、れれれな、れれれれなー。はーい、なんの歌かわかりますね。
 ん? おわかりにならない? では、上の文章は、どーぱーん、ざっぱーん、水に流しましょう。忘れましょう。ごぼごぼごぼごぼごぼ・・・。

 さて、したたかな人から、ちみもさん(7月10日付)とこに流れる。あははははは、 長髪連盟いいわあ。船井、俺のかわりに入れ。俺はサラリーマンだから無理だけど(でも、アナーキストだが)あんたなら丁度いいし、あの中でも結構長くないか?
 長髪のマッドサイエンティストっていえば、トニーたけざき大先生の「岸和田博士」が一等いい。あのぶちぶちの切れかたは最高だ。俺もマッドサイエンティストをやりたかったんだが、残念ながら、そういう職種はなかった。非常に残念。そう、トニーたけざき、あれだけの才能をこれほど無駄につかうとは、きゃつはただ者ないかもしれないかもしれないと思わんかね。皆さん。

 というわけで、こんなおもろい日には、この一冊、山下洋輔の「ドバラダ門」(新潮文庫)を送ろう。
 探した探した。ほんとは井上ひさしの「腹鼓記」を探していたのだが、こっちが先(?)に見つかったので、よしとしよう。井上ひさし先生にはまたのご登場を願います。

 知っての通り、山下洋輔はジャズピアニスト。手の平、肘打ち、頭打ち(さすがに頭の方は、血を出して1回でやめたそうだが。)、ともかく全身・全霊をかけてピアニストしている人である。また、筒井康隆の友人でもあり、タモリの仲間でもある。ま、そんな人物が書いた初めての小説(エッセーはいろいろある。「ピアニストを笑え!」なんて有名だ。・・・とか云って、エッセーの方はあまり読んでません。すみません。)だ。
 ちょっと、裏話を記すと(この本のあとがきか、筒井康隆のエッセーに書いてあったと思うのだが)筒井康隆の「筒井順慶」と同じようなシナリオで、山下洋輔は「山下啓次郎」を発見する。啓次郎は、洋輔の祖父にあたり、明治期に刑務所の設計をした人なのだ。彼は、ヨーロッパの刑務所を研究し、よりよい(?)刑務所作りに励む。そして、欧風の刑務所を日本に作るのだが、近日になってその刑務所の取り壊しが決定される。こわしちゃならねぇ、ってんで山下洋輔が、刑務所の門前でコンサートを開く、という話なんだが、いやはや、刑務所のことが逐一詳しく書いてある。ちょっと前に(文庫本は、平成5年発行)読んだので詳しいことは忘れたが、排水溝の設備とか、囚人の監視の仕方、刑務所全体の構造、逃亡されにくい刑務所などなど、刑務所という一般人には一番はなれた世界がそこにはある。しかし、ぜんぜん暗くない。緻密に計算された文体がそこにあった、と思う。(「思う」というのは、一文一文を思い出すことはできないのであるが、そういう雰囲気があったということ。)
 一読するといい。ちょっと厚め(558頁、文庫本にしては厚い。)だけれども、ぼちぼち読めば、いつかは終わる。どしどし読んだら、すぐ終わる。

 当然、CDも(全部ではないけれど)持っているわけで、「さくらさくら」なんて好きなんだ。なんというか言葉がみつからないけど(そもそも、音を言葉に直すなんて、無粋なことだし。)、大天才ってのは、そういうもんかもしれない。活力だ、活力。

 〆の言葉は、文庫の裏表紙から引用しよう。
 『日本文壇をしゃばどびと震撼させた奇著を読め。』

update: 1996/07/11
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