書評日記 第61冊
剣客商売 池波正太郎
新潮文庫

 侍漫画について書いたなら、侍小説も書かねばなるまい。というわけで、本日の一冊は池波正太郎の「剣客商売」(新潮文庫)である。

 別に、一人づつ紹介というわけでもないのだが、より多くの作家を紹介(ま、俺ごときに紹介されたところで、どーってことはないのだが)したいのと、一冊についてそれほど深く書きたくないので(間がもたないし)何冊が一遍に書くことにしている。
 俺にとっては、池波正太郎といえばこの「剣客商売」なのだが、他に・・・と思いつつ裏表紙の見返し部分を見るのだが、んー、それほど読んでいないことがわかる。連載ものとして有名なのは、映画にもなった「鬼平犯科帳」と必殺仕事人で有名な「梅安」がある。こっちの方は最初の幾冊しか読んでいない。どちらもそこそこ面白いのだが、あんまり連載ものは好きではないので(とかなんとか云って、「グイン・サーガ」は読むし、「宇宙皇子」も読むし、「幻魔大戦」も読んだ。)というか、ちょっと全巻買うとしんどいお値段に危惧してしまって手を出していないだけなのである。
 短編ものなら、ちょくちょく読んでいる。中公文庫で出ている「新撰組」関係は読んでいる。俺の歴史小説の好みはどちらかと云えば、戦国武将よりも幕末のほうをよく読む。勿論、発端は司馬遼太郎の「竜馬がゆく」なのだが、古川薫の「桂小五郎」とか、同じく司馬さんの「西郷札」、子母沢寛の「勝海舟」、あとその他諸々。(・・・って、前に読んだモノが多いので忘れてしまった。)

 そうそう、忘れてならないのは、池波さんは食い物の造詣に深いことである。いわゆる、グルメではないのだが(今となっては、グルメなんだろうけど、当時(江戸であっても、昭和初期であっても)はそういう食い物が喰えた。)日本の食材を活かした食べかたをなさる人である。「食卓の情景」とか「味と映画の歳時記」なんかに載っている。あと、「鬼平」にそーいうものが続々でてくるようだが、俺はあまり読んでないのであまり詳しくは話せない。確か、「鬼平」にでてくる食い物を(さし絵つきで)羅列した本があったはずである。
 そういう素朴な素材をヘルシーと称してしまうとハイカラになってしまうけど、やっぱり俺は焼き魚が好き。そうそう、池波正太郎は、開高健や辻静雄と食卓を囲むことがあったそうだ。今となっては、3人とも死人。ぐう。

 最後になってしまったが、俺がなぜ池波正太郎の小説を読むかと云えば「武士道」がそこにあるからだと思う。熱血うんたらの方では無くて、静かな「武士道」。美しい青年の姿がそこにはあると思うのだが、これはちょっと感傷的すぎるな。
 それほど気構えて読む必要はないと思う。たまーに読むといい小説かもしれない。

update: 1996/07/31
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