書評日記 第65冊
攻殻機動隊 士郎正宗
青心社

 お猿の大将、『読書とは内容を読むにあらず』(かなり曲解)という大ぼけをかましていたので、一言。
 勝義君に聞いても、「寝ながら読むのは読書じゃない」としか言わない。ただ、安部君は「寝っころがって読むのが読書だ」と言っている。うーん、どっちなんだろうか。
 ところで、「本」を「読」まないとすれば、なんだろうか。人間は五感に頼るわけだから、視覚すなわち「読む」は別にして、
○嗅覚・・・新刊の「匂い」、古本のひなびた「薫り」を楽しむわけだ。印刷所から出てきた新刊はインクの匂いが新鮮だったりする。
○触覚・・・紙の手触りだよな。昔の岩波文庫の手触りは本当に手になじむよう。角川とか、講談社はちょっとつるつるしすぎ。
あと、本の上下を切り揃えずにでこぼこしているのは、新潮と角川、中公。文春や講談社、河出は揃えてある。工程の手間から揃えた方が高くなるらしい。
○聴覚・・・ぱらぱらめくる音。指のすれる音を楽しむわけだ。
○味覚・・・当然、これは喰って覚えるってやつ。でも消化されないから、胃腸に悪いぞ。
 あと、物として扱うこともできるな。重しにするとか、枕にするとか。

 「つっこみ」には「ぼけ」で答えるこの方式。「外骨式差異と反復」と命名いたしましょうか。そうそう、以前のGAGを見忘れた&初めての方はこちらへどうぞ。別に「壊れている」わけではないのよ。最初っからこれがやりたかったんです。「書評日記」はこのための伏線なのさ、ふふふふふ。

 さて、気を取り直して(?)今日の一冊は、士郎正宗の「攻殻機動隊」です。漫画をバカにして読まれない方も読むといい・・・んですが、今の人達皆漫画を読むから、逆だな。漫画ばっかり読んでないで小説を読みなさい。(これじゃあ、もとに戻るだけだ。)
 「攻殻」は「アップルシード」を十分濃くした作品です。もうちょっと、判りやすく描いたのが「仙術超攻殻オリオン」。新しい「ドミニオン」の方は、これらとは別個に楽しめます。「攻殻」は映画にもなって、ビデオも出ています。観た感じでは、巧い具合にはまっているようです。ただ、最後のシーンで「縁があったから」ってのを入れて欲しかった。そこが重要なポイントなのに。これは押井守が我を通したのか、士郎正宗があまり加わらなかったのかは、アニメマニアではない俺にはわかりません。(パンフを読むと、士郎正宗はあまり関っていないそうなので、押井守の読みが浅いのか・・・。)

 はい、正宗流に判らない単語ばしばし書いてしまうとこんなことになります。彼の漫画をご存じない方、御安心ください。士郎正宗は、欄外にごっちゃりと注釈を書くので有名な漫画家です。俺もその方式に習いましょう。

 あまりたくさん書いてみても仕方がないので「攻殻」のみに焦点を絞りましょう。舞台は、サイバーパンクなんだけれども、この語が判らない人はちょっと勉強不足、これで理解してください。さて、ジャックインとかハックという言葉に痺れたり官能を覚えたりすれば、合格です。彼の雰囲気に遊べることでしょう。
 で、ポイントなんですが、SF的感覚は解った方がいいけど、ハッキングはわかんなくてもかまいません。プログラムはできた方がいいけど、できても理解している人ばかりじゃないので出来なくてもかまいません。「GEB」や夢野久作を知っていればいいけど、実例はごろごろしているので、概念のみを理解すればよろしい。要は、「縁」と「空間」が理解できればいいのです。
 その、多分、これだけでは何のことやらわかないでしょうが、でも、多少ピンとは来るんじゃないかなあ。少なくとも、俺の書評日記をここまで読んだ人は解るはず。というか、わかんなければ読み続けてないよな、多分。

 さて、久々に〆の言葉。
『嫌い』って言葉が『嫌い』。
『嫌い』でしか表現できない私が『嫌い』
(槇村さとるのとある漫画の科白より。)

update: 1996/08/05
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