書評日記 第92冊
花図鑑 清原なつの
小学館

 JAZZライブに行ってきました。阿佐ヶ谷にある『マンハッタン』という生ジャズを聴かせるバー(?)なのですが、その、むちゃくちゃ狭い。カウンター席は10席ぐらいしかなくて、4人掛けのソファーがひとつあるのみ。そんな狭い空間の中で、ピアノと、ベース、ドラム、ホーンが鳴り響きます。客は10人入ればイイほうじゃないでしょうか。でも、やたらに熱くなる感覚、無理矢理にでもアツくなる感覚を思い出したい時には、とっても「便利」な場所です。
 マスターも、いい感じの人で、ちょび髭に、ちょっと禿げあがった単発。黒いベストと白いシャツ。演奏中、客はただただ、音楽の溺れ、マスターはグラス磨きに専念。「場末の」という言葉がぴったりです。これって、最高の褒め言葉なんですよ。覚えておいて下さい。場所は、俺の「参考文献」の和佳-Chanのページにあります。行く気のある方は、探してください。ここにリンク張れって?それぐらいの手間を惜しんでどうするんですか。実は、単純にリンクを張るのが面倒なだけかもしれませんが。

 一緒に行ったのは、4人なのですが、そのひとりが、献血日記の方。はあ、アルコールは適度に消費しましょう。なんかね、いろいろワケありなような気がしますが、結局、身体壊しちゃったら何もできませんぜ。今までの苦労が、水の泡です。そして、これからの苦労も、水の泡です。そういうもんでしょ。「生き抜く」ってことは。「無茶」と「無謀」というのも違います。その辺わかるでしょ。

 さて、彼にとって、思い出の漫画家なのか、それとも、そのときに俺が買った少女漫画が衝撃的な意味をもつのか(読んだ感じでは、後者のようですが)その辺はわかりませんが、書評日記では、清原なつの「花図鑑」(小学館)を紹介しましょう。
 「花とは、性器まるだしのもの。恥ずいやつ。」というのが、全体のテーマだと思うけど、俺の偏見でしょうか。ま、幾編かはそのようなものがあります。とはいえ、少女漫画ですから、あからさまなセックス・ネタが出てくるわけではありません。その秘めたる表現方法と、科白回しの巧みさが、賞賛に値します。もっと、注目を浴びてよさそうな漫画家だと思うんですが、ま、ちょっとばかしマイナーな方が、こうやって、自慢げに紹介もできるし、彼女の私生活への影響も少なくなり、「良い作品」のレベルを保つことができるのだろうから、これでよしとしましょう。
 「彼女の私生活」と書きましたが、清原なつのの処女作を読んで思った結果です。人気漫画家となり、生活&作品の質を犠牲にして、大勢の人に読まれることを選ぶべきか、それとも、読者との心の通った「対話」を望むのか。ま、少なくとも、この書評日記を読んでおられる、20人弱の諸君諸嬢には答えは明白でありましょう。そういうものでは、ないでしょうか。

 さて、少女漫画といえば、意外と簡単に「身内の死」とか「両親の離婚」とかいう悲劇的なシュチュエーションが多い中、俺が清原なつのの漫画を称える理由のひとつとして、必ず、「ハッピーエンド」、乃至、「救いのある終わり方」をするところにあります。
 確かに、突っ込みが甘いからそうなるのかもしれません。しかし、意図してそうならば(だと思うのですが)、なかなか出来ないものです、こういうものは。河合隼雄の言葉を借りると「しあわせな幼児期を送っていたひと」といえるでしょう。

 あなたは、そうで無かったもしれません。しかし、将来、あなたのもとで幼児期を過ごすひと、にはそうしてあげてください。彼&彼女のために。

update: 1996/09/06
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