書評日記 第108冊
小さな恋の物語 みつはしちかこ

 彼女と最初に出会ったのは、阿佐ヶ谷のJAZZライブだった。その直前に一通だけ、メールを貰った。「衝動的」の部分を、「衝撃的」と読み違えたけど、俺にとっては、やっぱり、「衝撃的」なメールだった。メール交換をしていて、「想い」が募る。
 第99冊めを書いたのは、何時だったろうか・・・えーと、webで告白なんていう、くさいことをやった。でも、アメリカンな感じでいいんじゃない。こういう公開っぽいことも。日付は、書いていないのでわからない。なんとなく、頭がぼんやりして、覚えていない。
 浅草で、初めてのデート。お昼に「かつ丼」を食べて、浅草寺をぐるーっと回って、商店街の突き当たりまで行って・・・。なんだなあ、結局、飲み屋でホッピーを飲んでいる俺達って、なんか、非常にお安くて便利。日もとっぷり暮れ、なんか、僻地まで歩いて、感情が高ぶってしまったけど、その、初めて手を握った。ただただ、切なかった。
 なんか、不思議な関係で、状況がいろいろややこしくて、それでも、俺は離れられなくて、せっせとメールを書いていた。
 先週の日曜日、丸善の前で待っていた時、ふと、来ないかもしれない、という不安が過った。午後6時きっかりに、交差点にあらわれた姿を見て、ほっとした。メールでは、足早な想いが募るのだけれど、会うと、ちょっと気恥ずかしい。恥ずかしさをまぎらわすために、やたらに饒舌になる。そして、ちょっとした妙な沈黙がちょっと気まずい。
 想いのたけを、すべて吐き出してみたいのだけれど、まだ、3回しか会っていない。しかも、初めて会った時から、その、1か月ちょっとしか経っていない。いろいろ状況もややこしくて、自分が流されているみたいで恐いけど、この状況をはっきりさせてしまうのが恐かったけど、喫茶店で云いたかった科白、用意していた科白は、云えたみたい。
「俺の弟って、バイク事故を起こして、死にそうになったことがある。でも、生きている。おかんは、俺が小学校の頃、スクーターで事故を起こして、頭蓋骨の陥没までして入院したけど、生きている。親父は、俺が3才の頃、交通事故を起こしているけど、生きている。
 俺の家族って、悪運が強いんだ。だから、身内になれば、絶対、長生きは確実だよ。」
 貴女は、気付いたのか、どうか解らないけど、話は、子供のことまで、すすんでいた。喫茶店に行って、コーヒー2杯ずつで、閉店までいた。
 追い出されたけど、俺は、まだ、話足りなかった。その、なんというか、いつまでも一緒にいたかった。お茶の水の地下鉄の駅前で、別れた。結局、手も握れなかった。
 いずれ、貴女と貴女の母親と俺とで「演劇」を見に行きましょう。その、なるべく早いうちに。夜遅くなって心配すると悪いし、ね。「演劇」は詳しくないので、適当なところを選んで下さい。「趣向」は合っているから大丈夫でしょう。

 というわけで、彼女は、えーと、俺のもの・・・ものじゃないんだけど、その「大切な女性(ひと)」なので、手を出さないように。
 えー、餌は与えて構いません。甘いものは好きかどうか、わかんないけど、日本酒は好きみたいです。ばかすか飲んでます。いえ、別に、俺も飲む方だから、割り勘だから、痛くないけどさ。その、家計のエンゲル係数の半分は、酒という状態は、勘弁してほしいんですけど。

 さてと、またもや、本日の一冊が押されている。だんだんタイトルに偽りありのような感じになっているが、ま、構わんでしょう。俺のHPだし、俺の日記だし。
 んでもって、今日は、みつはしちかこの「小さな恋の物語」を紹介しよう。多分、誰でも知っているだろうから、説明するのも野暮なんだが、「身長の低い女の子と身長の高い男の子の恋物語」である。なんだ、これ以上云う言葉がないな、そのまんまです。そのまんま。
 この漫画には「好き」という雰囲気が溢れています。「好き」になるということは、そういうものかもれない。趣味が合っているとか、才能に惚れだされたとか、かわいいとか、奇麗とか、身長とか、指とか、そういうものは、全て「きっかけ」に過ぎない。

 「なんだかよくわからないけど、好き。」というの大切にしなさい。そういうアドバイスを貰いました。
 そうだよな、そんなものかもしれない。

 俺は、「言葉」から入るタイプです。理解して欲しいならば、言葉を尽くす。言葉を投げて、投げて、投げて、そして、受け止める。反応を見る。再び、言葉を探す。解って貰うまで、そして、自分の気持ちが解るまで。
 そういった「精神的な前戯」が、ひとには必要だと思います。勿論、黙って、肌の触れ合いで確かめることもできるでしょう。何も云わなくても、解り合える関係もあるかもしれません。
 でも、俺は、そして、彼女は、「言葉」を尽くした。語り合った。黙っていれば、解らない、その秘密の共有、そして、その秘密でさえも、過去でさえも、理解し合える関係があります。ま、これからは、ちょっとずつ「秘密」を持ちましょう。極端に解り合ってしまうのも、おかしな話だし、独立した人間として、それは必要なものだと思うから。
 でも、なにかあれば、何か重要なことがあれば、話して下さい。「言葉」を交わす。「言葉」が全てとは云わないけれど、でも、俺には、そして、彼女には、それが、重要なわけですよ、うん。

 幸せな時は、たくさんのお裾分けを致しましょう。
 幸せな時は、幸せな気分に浸ってもいいんじゃない。
 幸せな時は、嬉しい顔をしようよ、ね、野原さん。

update: 1996/09/09
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