書評日記 第138冊
ゲーデル・エッシャー・バッハ ダグラス=ホフスタッター
白揚社

 対話編おば、ちょこっと。

「いやあ、なに、なんだと思いましたよ。実際。」
「はははは、昨日の書評日記の事?」
「そう、わっちゃんが忠告してくれました。ははは、全然、悪気はない・・・というより、攻撃する意思すらありませんでしたよ。」
「全く、勘違いもいいところだね。」
「でもね。読み返してみると、まあ、解らなくないんですよね。読み返してみると、確かに、そう読めないこともないし・・・。」
「読者の勘違いってわけ?それとも『深読み』のし過ぎ?」
「まあ、どちらかと云えば、『深読み』のし過ぎかなあ。無理もないけど。」
「でも、こういうのって結構あるよね。誤解ゆえのもつれとか。」
「う、痛いところ突くじゃないの。俺の場合、『早とちり&勘違い』が得意だから、どうもね、勝手に妄想逞しくしてしまったりするし。」
「想像力がね。多いから。」
「うん。1を聞いて10を知るというか、1しか知らないのに10まで創ってしまうわけだ。」
「少ない情報から組み合わせるわけね。」
「そう。んなもんだから、勝手な妄想をしてしまった後は、それを現実と思い込んでしまう時も多々ある。」
「ま、確かに。でも、それって、読書そのものがそうじゃないの?本ってのは、情報としては本の中しかないわけだし。」
「まあ、そうも云えるね。俺が『誤読』を薦めるのはそういう意味だし、『誤読』を恐れるなというのもそういう意味。小説ってのは作家が書いた後は、その読解は読者に任せられてしまうから。誤読されても仕方が無い。放任状態なわけだ。」
「でも、それじゃあ、作家の意思ってのはどこにいっちゃうわけ?誤読されてたまんまだと、意思が通じるってことが無くなっちゃうんじゃないの?」
「そう。確かにね。読者の読解力が足りなかったり、また、読者が作家に対して好意を以っていない場合は、誤読したまんまになるし、それは、悪意ある誤読であるから、作家の意思なんて全然通じないわけだよ。」
「喧嘩している状態と同じわけね。」
「そういうこと。悪意を持って、文章や言葉を聞いてしまえば、理解ってのは読者に委ねられてしまうわけだから、どう書いたところで伝わらない。」
「哀しいね。となると、理解しようとしない人には絶対理解できないわけ?」
「まあね。そうかもしれない。俺もいろいろ言葉を掛けたりするけど、どーも、理解できない人、俺から見れば、そういう真実の部分を理解したくない人ってのは本当に存在するみたい。」
「・・・。」
「いろいろ、罵倒したり忠告したりするわけじゃない。それに対して怒って返してくる。そういう喧嘩状態を敢えてやるのは嫌なんだけど、そのね、平和な穏便な部分ではまどりっこしくていけないわけだ。」
「でもねぇ。それって、単に喧嘩好きって事じゃないの?」
「うーむ。そう云われると、ちょっと辛い。でもさあ、相手に怒られたって俺が罵倒される訳だし、誰も言ってくれないで、その人がずるずる落ちてしまうよりは、ちょっと下世話だけでも、ちょっかいでも出してみようかなあ、とか思ったりするんだよな。」
「あ、それって、あのこと言っているの?」
「まあ、あの事と云えばそうだね。本人は解っているのかなあ。ちょっと心配。」
「でもさあ、もう止めたら?保護者面するな!って云われたし。」
「まあね、後は彼は彼なりにやるんだろうね。」
「そうでしょう?手助けってのは、やりすぎると単なるお節介だけになるし、その人自身をだめにしかねないし。」
「ユングも云ってたしね。人は独りでしか歩けないって。冷たいようだけど、そうしないといけないかもね。残念だけど。」
「まあ、インターネットでやっている限りは、見えるわけだしさ、大丈夫じゃないの。」「うん。そうだね。」
「あ、そうそう、もうひとりの方はどうするの?」
「もうひとり?」
「そう、第51回でとんでもないものを書いた人。」
「ああ、あのひと。どーしようかなあ。だんだん悪くなってくるんだよね。」
「うん。」
「もうちょっとね。なんとかなるんじゃないかなあ、なぞと、期待はしたんだけど、うーむ、どうにもこうにも解らないみたい。」
「新屋さんが呆れてたね。」
「うん。新屋さん。どーして、あのボードにいるのか不明だよなあ。」
「何を考えているのかな?」
「でもさ、羅列した日記をみるとさ、俺の日記は入っていなかったから、別にどちらというわけでも無いみたい。そもそも、よく解らないんだよね。新屋さん。みやちよさんとセットになっているだけなんだろうか。」
「でも、ボードって何も派閥なわけじゃないんだし。」
「いや、派閥っぽいところはあると思うよ。少なくとも、ReadMe!のフリートークと古書店の両方に書き込みをするのはちょっと気が引けるんじゃないかな。だってさ、ほれ、それぞれを意識してさ。」
「意識しているの?」
「うん、少なくとも俺は意識しているね。だってねえ。あー、毎晩、身内ネタの羅列ではちょっと辟易する感じがするんだけど。どうなんだろうなあ。毎晩、毎晩。」
「まあ、書き込み難いことは確かだけど・・・。でも、それって、ReadMe!の方もそうじゃないの?あれから、新しい人はひとりしか増えていないし。しかも、それって、身内関係っぽいし。」
「うーむ。それを云われると辛いよな。まあ、確かにあの雰囲気ではちょっと書き込み辛いかもしれないな。だけどさ、少なくとも読んでいるだけの人にも面白いと思えるようなボードってのを考えてやってんだけどさ。」
「所謂、ROMの方ね。」
「そうそう。大体さ、フリートークなんてのは人数が多くなりすぎると収集がつかなくなるんだよ。誰が誰にレスポンスを返しているのやらわからない状況になるし、まして、話題が交差してしまうと、ごちゃごちゃした感じになる。」
「そうなんだよね。オフミであんまりたくさん人がいると、喋りたい人ばかりで困ったり、結局、個々でグループを作って話をしたりするし。」
「うん。日本人って、それほど多人数で喋る機会ってのがあまり無いから、どちらかと云えば身内の雰囲気が好きなんだろうな、と思う。だけどさ、せめて、インターネットのボードぐらいは、もっと開かれた雰囲気を作りたいなあと思うんだけどどうかなあ。」
「そうだよねぇ。身内だけの会話であれば、何も公開する必要もないわけだし。」
「うん。身内ネタの披露ってさ、その、公開セックスみたいな感じで嫌なわけだ。いかにも仲良くしてますよぉ、という感じがあってさ、誰でも入っていけるような形式だけはあって、それでいて閉鎖的な感じがして、嫌なわけ。」
「あ、それって、攻撃してない?やめた方がいいよ。また、怒るかもしれないし。」
「いや、大丈夫じゃないの。彼も打たれ強くなったし、そう、身内も一杯いるみたいだし。取り巻きがなんとかしてくれるんじゃないかなあ。」
「あの、それって、言い過ぎじゃないの?」
「う、やばい、ちょっと、言い過ぎ。ま、嫌ならば見なければいいわけだよね。夜久さんも云っていたし、それこそが『自由』な雰囲気ってことなんでしょう。」
「そう、『自由』ね。便利な言葉だけど。」
「うん。まあ、仕方が無い、としか諦めるしかないよね。社会の安定というものはそういうものだし。」
「あの・・・、全然、わかんないんですけど。」
「うーん、ごめん。言葉が足りなかった。俺ね、言葉が足りなくて、自分だけで解って物を云ってしまう時があるからね。だから、自己完結って云われるんだよな。」
「うん。そうだよね。」
「あ、う、納得されてしまうと、ちょっと困りもんなんけど・・・、ま、いいか。えーと、何を話そうとしていたんだっけ。」
「社会の安定ってこと。」
「そうそう、社会の安定。社会ってものは、安定しなくては社会にならないわけ。例えば、俺みたいな騒動好きというか『トリックスター』的存在や、夜久さんやばうわうさんのように『トラブルメーカー』的存在が一杯いる社会ってのは存在しないわけだ。そもそも、社会ってのは保守派が多数を占めるから安定するんであって、急進派ってのは常に少数なわけだね。だから、安定した社会ってのは、のんのんとした平凡な人達が一杯いないといけないし、自由とかなんとか云いながらも拘束されていることを知らずに生きている人達が溢れていないといけないわけ。」
「ちょっと、それも、過激すぎない?」
「まあ、いいんじゃないの。所詮、書評日記を読んでいる人は少数なわけださ、それでいても『真実』を真面目に取り扱おうなんて人は更に少ないわけだし。」
「あれ?書評日記を読んでいる人全てじゃないの?」
「そりゃあ、まあね。ほんの一握りじゃないかな。勿論、それは、俺が決めることじゃなくて、読者が決めることなんだけどね。」
「くくくくく。」
「ん?何を笑ってんの?」
「はははは、はあ、可笑しい。」
「ん?」
「それって、結局、読者の『誤読』を薦めるって事になるんじゃないの。読者の理解力、作家への好意が一番って話。」
「ははははは、なるほど、悪意の勘違いの話。なるほど、なるほど。なーんだ、こうやって対話編をして、やってみても、きちんと最初のテーマに戻ってくるわけだ。偉いなあ、俺って。」
「あのねえ。あたしだって偉いんじゃないの?」
「うんうん、君は俺の『アニマ』だからね。偉い偉い。はい、偉いですよ。」
「解ったところで、終わりにしましょうか。」
「まあね、本日の一冊だけ、紹介しましょうか。どうする?」
「まあ、いいんじゃないの。おざなりだけど。」
「じゃあ、紹介しましょうか。ダグラス・ホフスタッターの「ゲーデル・エッシャー・バッハ」ですね。古本屋で100円で落ちてました。はあ、哀しいね。理解されないのやら、なんというか。」
「まあ、古い本だし、仕方が無いんじゃいないの?」
「そりゃそうだけどさあ、でも、100円ってのは無いよなあ。俺の一生のテーマだと思っているのにさあ。」
「でもいいじゃない、手元になかったんでしょ。欲しかったんでしょ。」
「まあね、図書館で読んだっきりだし、手元に無かったし・・・。欲しかったのはそう。」
「んで、解説は?」
「まあ、書評日記全体に満ち溢れているといっても過言じゃないだろうなあ。繰り返しの美しさ、螺旋の美しさ、数学の美しさ、入れ子の美しさ。そういうものがね、いろいろ詰っているんですよ、この日記には。」
「それって、あなたそのものがそうだからでしょう?」
「そう。そうなんだよな。衝撃的な本なのかもしれない。未だに興味が尽きないし、それにのめり込んでいる。こうやってさ、対話編をやって、だらだら会話を続けたり文章を書いたりしても自分のテーマところに戻ってくるのは、やっぱり、ほら、身に染み付いているって感じだろうか。」
「そうでしょうね。きちんとあなたの部分ってのが文章の芯にあるし。」
「ははは、嬉しいことをいってくれるじゃあ、ありませんか。」
「自画自賛?」
「いや、そうでも無いみたいだよ。一応、他人にも云われたしさ。」
「よかったね。」
「うん、よかった。」
「よかった、よかった。」
「じゃ、そろそろ寝ましょうか。」
「では、また。」
「おやすみなさい、また明日。」

update: 1996/09/09
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