書評日記 第169冊
オセロウ シェークスピア
新潮文庫

 果たして、あなたは自らの「死」を以ってして解決を望んでいるのではないでしょうか。この関係の苦悩は俺を苦しめます。何かの決着を得たいのか、何かの安心を得たいのか、それはよくわかりませんが、ただ、言えることはこれ以上俺の神経を逆なでしないで欲しいというのが、俺の切なる願いです。
 もっとも、あなたの友人として此処にいることを望むし、その関係が続くことを望みます。あなたの言葉は俺にとって非常にありがたいし、ひとつの「励まし」を与えてくれます。それは、甘えでもなく卑下でもなく、「感想」を与えてくれます。俺の生きた道筋を、俺のやってきた道筋を認め、その上で、何かを好み、そして俺の為すことを見守ってくれる。そして、その「歯止め」になってくれる。
 俺が暴走しそうな時、つまり、俺が俺のみの考えで動きそうになった時、あなたは一つの「楔」を打ってくれます。あなたに対して正直でない気持ちを照らし合わせることに、偽りの苦悩を覚える時、俺はそれを止めます。一歩手前でやめること、そして、限界ぎりぎりまでの何かを為すこと、それが自らの可能性を模索することであり、同時に、社会の中で生きていく最低限の術ではないでしょうか。

 さて、あなたが、何をしているのか御自分で解かっているのでしょうか。ひとつの人格がふたつに分裂し、またそれを自覚しつつ、俺に対し、同時に、彼に対して接することがいかに不自然なことであるか、また、それらの行動がいかに人を傷付ける行動であるのか、あなたはわかっているのでしょうか。
 勿論、俺の苦悩は俺のものでしかないし、あなたと共有はできない。しかし、あなたから与えられる苦悩に俺はこれ以上耐えられるのでしょうか。よくわかりません。その度に胸が苦しくなります。何を求めるのでしょうか。いいえ、違います。あなたのその行動自体に俺は疑問を呈するのです。
 果たして、こういう考えを持つのは俺が「男性」という性を持っているからなのでしょうか。また、そういう行動を為し得るのはあなたが「女性」という性を持っているからなのでしょうか。
 そう、「恋愛感情」は抱かないほうがいいのかもしれません。悲しいことですが、それは、本当のことかもしれません。独占欲に狂い、嫉妬に狂い、その人を我が物としたい感情に駆られる。それは、一枚のハンカチでも起こります。

 「期待」、そう、俺は何を期待しているのでしょうか。「友人」として、あなたに忠告すべきことは全て言ったような気がします。ひょっとして、あなたは、俺に、「さようなら」の一言が言わせたいのでしょうか。
 望みのままにしましょうか?
 あなたの、そうあなたの内なるあなたの望み通りに、俺の中のあなたを「死」へと誘ってしまえばいいのでしょうか。

 この気持ちを弄ぶのは危険ではないでしょうか。
 俺にとって、「安全」を望むならば、この感情は切り捨ててしまった方がいいのではないでしょうか。
 
 今は、そう、「安全」に別れたい気持ちが優先しています。
 明日は、どうなるかわかりません。
 俺は、大丈夫です。
 会わなければ忘れることもできるでしょう。

 結論は、そう、俺にも決める権利があるのですよ。
 厳しいようですが、俺はそれを「真剣」に考えるべきかもしれません。

update: 1996/12/16
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