書評日記 第189冊
パパラギ ツイアビ
立風書房

 どこかのCMで加山雄三が手にしていた本が、これである。住宅のCMだったような気がするが、庭のリクライニングチェアーに寝そべる加山雄三と、手にする「パパラギ」の組み合わせが妙に嬉しくて、納得した覚えがある。
 ちなみに、これを紹介しようと思ったのは、怒涛の書評でみつけたから。別に対抗をしようというのではなく……まあ、「比較」のため、というところかもしれない。悪い意味ではなくて、良い意味で。

 確か、読んだのは大学の2年の時ではなかっただろうか。
 当時の俺は授業をサボって、漫研に入り浸りだった。まあ、今の俺の状況を考えれば、それで良かったのかもしれない。ただ、言えるのは、当時は罪悪感を覚えつつ学生の本分であるところの学業をサボっていた。両親の投資をどぶに捨てるような行為をしていたわけだ。
 日割り計算でいけば、国立大学の授業料は1時限千円だったと思う。今は、多少高くなっているはずだが。

 父親の「投資」は俺にどんな影響を残したのだろうか。

 とある計算によれば、人間は一日3時間だけ働けば、生活できると云う。アメリカの共同生活をしているグループでは、週に1、2回の出社で生活を賄っている。TVとかラジオ、車などを共有しているわけだ。

 現在の日本のように核家族化が進むと、個々の家族の「投資」は高くなる。これは、以前から社会問題になっているし、その復権として、2世帯住宅等のブーム(?)が起こっているのかもしれない。土地は親から受け継ぎ、共同で家を建てて暮らすことで、財産を保持する。
 ちなみに、俺のところのような転勤族は財産を残すことはできない。引越しの度に百万円程度かかっている。
 今までは、会社の負担であったが、ラストの引越し、つまり、父親の定年後の札幌への引越しは自前である。相当無駄をさせられている、と思っても難くはない。

 今の俺は、勤務時間こそ、日7時間となっているものの、正味働いている時間は、2時間弱だと思う。
 1日コンピュータの前に座ってはいるが、こうやって「書評日記」を書いたり、メールを書いたり、日記を読んだりして過ごす。
 それでも、暮らしいけるだけの月給を貰っているのだから、どこかでワリを喰っている人がいるわけだ。

 インディアンは、神の御告げに従い行動をする。
 神の喜ぶ行為をするという、彼らの目的がある。

 果たして、今の俺は、コンピュータの仕事を一生続けようとは思っていない。少なくとも、生活の中心に、人生の中心に据えようとは思っていない。

 「考える」ことが俺の天職だと思っている。
 こうやって、常に考え続けることが出来る。考え悩むことによって、少しずつ解答が得られる。それは、数学の証明をしている気分である。

 ある意味で、研究者とか学者なんてものは、社会のおまけに過ぎないと思う。どちらかと云えば、即物的に畑を耕している人達の方がずっと偉いような気がする。

 ただ、間違えてはいけないのは、農耕をやる時間は、農耕をやっているだけでは減らないことだ。高効率を望み工夫をすることで、農耕をする時間が短縮される。いわゆる、「サボる」時間が増える。

 現代人は、「サボる」時間を無為な遊びの時間に変じてしまう。酒を呑んだり、カラオケをしたり、ばか騒ぎをして時間を浪費する。
 一体、君達は何をやっているのか?と問いたいが、彼らは楽しい時間を過ごしているのだと言う。仕事中のストレス、つまりは、生活のために何らかのストレスをため込み、それを発散させるために、金を使って娯楽をする。逆に、娯楽をするためは金を得なくてはいけないので、仕事をする。そして、ストレスを溜める。
 うーむ、無限ループだ。

 人間、何もしなくてもいい、と言われても何かしたくなる。
 独房に独りいれば、気が狂うのはそのためである。
 何かをしたい。人に接していたい。そういう本能が、気を狂わせる。

 俺は、仕事をサボっている時間は、こうやって、物思いに耽っている。はっきり、云って、こっちの方が疲れる……が、楽しい。
 考えるのに飽きると、仕事に戻る。
 こうなると、一体、どちらが「仕事」なのか解からなくなる。

 大学に行き、どぶに金を捨てるように、授業をサボっていたのは、その「時間」を得るための必要経費ではなかったか、と思えてくる。
 あの自堕落な生活が無かったら、今の俺は存在しない。妙に勤勉な癖に、興味のあることにしか集中できないのは、困った人……というか、このように考えるために育てられた、というのは傲慢な話だろうか。

 そうそう、だから「真剣に遊ぶ」ことをしています。
 何にしろ、俺にとって、こうやって考えることの方が疲れるのは確かなこと。よっぽど、プログラマとして仕事をしている方が楽なわけだ……まあ、途中で飽きちゃうけど。

update: 1997/01/08
copyleft by marenijr